噛合い時にはすば歯車にはたらく力
以下では理解しやすいように歯車は転位していないものとして考えている。
転位している場合はねじれ角 β、歯直角圧力角 αn、基準ピッチ円直径をそれぞれ噛合ピッチ円上の値に置き換えたものになる。
はすば歯車は平歯車と違い、ねじれ角がある分スラスト荷重が発生する。
スラスト荷重 T、半径方向荷重 S と接線力 F には
の関係がある。
…と言うのはどの本読んでも書いてあるしググればすぐ出てくる。
一方で何故スラスト荷重が発生するのか、その方向はどうやって決まっているのかがよくわからなかったのでそのまとめ。
はすば歯車にはたらく力
噛合いに際し、相手側歯車から受ける荷重は歯直角断面における作用線上から入力される。
その入力荷重は円周方向荷重 f と半径方向荷重 S に分力される。
つまり、半径方向荷重 S は相手の歯車に関わらず、自分が外歯であれば中心方向、内歯であれば外方向(まとめるとリム厚がある方向)に作用する。
作用線と噛合歯面の接線のなす角は圧力角であるから分力の間に成り立つ関係は となる。
平歯車であればここで終わる*1がはすば歯車の場合はもう一段階ある。
円周方向荷重 f は歯車の回転方向(軸直角断面における円周方向)の荷重:接線力 F と軸方向の荷重:スラスト荷重 T にそれぞれ分力される。
軸方向と円周方向荷重(歯直角断面)のなす角はねじれ角 β であることからそれぞれ の関係がある。
以上から冒頭に言った関係式が成り立つことがわかる。
荷重方向
もちろん入力トルクの方向にも依存するがそれ以外に各荷重を決める要因は次の通り。
接線力 F
歯車が駆動側(ドライブ)か被駆動側(ドリブン)かによる。
ドリブン側は回転させる方向に荷重が働き、ドライブ側はその反作用としてドライブ側に働く荷重とは逆方向の力が働く。
半径方向荷重 S
上述したように半径方向荷重 S は外歯であれば中心方向、内歯であれば外方向に作用する。
スラスト荷重 T
スラスト荷重がどちらの方向に働くかを考えるには
1. その歯車にどちらの方向に接線力が入力するか。
2. ねじれ角方向を考え、円周方向荷重はどちらに加わっているか。
3. 円周方向荷重の分力としてスラスト荷重はどちらか。
の手順を踏めば間違えることはない。
まとめ
接線力 F | スラスト荷重 T | 半径方向荷重 S | |
式 | F*2 | ||
方向 | 軸直角断面円周方向 | 軸方向 | 半径方向 |
方向を決める因子 | ドライブ or ドリブン | ドライブ or ドリブン、ねじれ角方向 | 外歯:中心方向、内歯:外方向 |
参考文献
- 蓮見善久著:「パソコンによる歯車の設計計算 (機械技術入門シリーズ) 」理工学社 (1993)
最後の図はこの本を元に描いた。
いろいろな場合のスラスト荷重の方向が描かれているので自分の理解があっているのか確認できる。