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読書記録:『地震 ー どのように起きるのか(サイエンス・パレット SP 036)』

比較的新しい本で読んだものはこれから感想を乗っけていこうと思う。言いたいことをつらつら書いていくスタイルで行こうと思う。

読んだ本

  • 地震 ー どのように起きるのか (サイエンス・パレット SP 036)
  • 纐纈一起著
  • 丸善出版(2020)
  • ISBN:978-4-621-30509-6

地震: どのように起きるのか (サイエンス・パレット)

地震: どのように起きるのか (サイエンス・パレット)

  • 作者:一起, 纐纈
  • 発売日: 2020/05/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

感想

twitter で面白いと流れてきてポチって読んでみた。
ページも少なく文庫本サイズ、しかも1000円+税と安い!レベルとしては物理やったことのある人からすれば全然重くない部類の計算でこの手の本には珍しく行間もほぼなし。読むのに時間かかる自分でもすぐに読み切れた。流体力学(または連続体力学)とベクトル解析(Gauss の定理とかあの辺)かじったことがある人なら2章の相反定理(P.48)以降*1から読み始めて大丈夫。
あと自分が思う一番のおすすめは物理数学の演習とかでベクトル解析の身近な題材探している人じゃないかと思う。地震動の導出までやればベクトル解析だけじゃなくて電磁波の輻射でやるような内容の計算も入ってるのでなお美味しい。久しぶりにこの手の計算して楽しかった。

内容としては

  • 地震におけるダブルカップルの導出
  • 震源モデルにおける P 波と S 波の導出

がメイン、というかそれが全て。特に後者のモデルで Helmholtz 分解から縦波/横波と P 波 / S 波の関係が出てきたのは素直になるほど~となった。
逆に上の2つがほぼすべてという超ピンポイントな本なので地震学全般を学びたい人からすると用途としては外れるかな。あと数式を読み飛ばすタイプの人には向かない本だと思う。

参考になるもの

相反定理(P.48)導出前まで

P.33 にて「熱力学からの要請で」(69)式を導入してる部分はこの講義資料(第15回 構成方程式)や連続体損傷力学 P.46 にもあるようにひずみエネルギー関数が全微分可であることを言ってるのだと思う。ただ P.33 に書いてある”熱力学が存在を保証してくれる”というより、仕事の考え方からして主軸上ではきれいな2次式でかける(=もとの座標系に直すと2次形式でかける)ことがあってそれが"エネルギー"として扱えるつまり積分経路によらないためには全微分性を持たなければいけないという流れな気がする…。

テンソル周辺が分からなくなった場合はこれの2章 テンソル解析の基礎がおすすめ。もともと後々に使うための準備ということもあって(自分が思うに)物理系の人間が好みなレベルでまとめてある。まあ今回読む上ではそこまでの理解は必要ではないと思うけど。なお、2.5節と2.6節は今回は飛ばしても大丈夫な内容。ちなみに特殊相対論・流体力学で断片的な理解だったテンソルをきちんと整理できたのはこれのおかげ。こいつ自体は3章まで読んで放置してる。

若干本題とはそれるが備忘録として。軸性ベクトル、極性ベクトルについてわかりやすく解説してある記事。

応力テンソルの対称性の導出は自分的にはこっちのほうがわかりやすいと思ってる。どこかでこの手の導出見たんだがどの本に書いてあったか忘れた。

相反定理(P.48)導出後から

ある程度しっかり書いてある電磁気学の教科書ならたいてい載ってる計算なのでそれを見るといいと思う。
自分がよく読んでたものなら次の2冊。別にこれら以外でも大丈夫だと思う。

理論電磁気学

理論電磁気学

電磁気学演習 (物理テキストシリーズ 5)

電磁気学演習 (物理テキストシリーズ 5)

*1:3章から読むと数式中のノーテーションで???になるのでこのあたりから読むといいと思います。ちなみにこの相反定理は静電気分野の相反定理と題材は違うものの同じ種類のものです。