potass' blog

ポタシウムのことが書いてないブログ。

外歯平歯車の歯形係数 #1

久しぶりに機械設計ネタを。

曲げ応力諸元

歯数 z -
モジュール [mm] m (m = d/z) d : 基準ピッチ円直径
円周ピッチ [mm] t t = πm
歯幅 [mm] b かみあい歯幅 etc
入力される接線荷重 [N] Ft ※接線方向

Lewis による曲げ応力 σ

Lewis によれば接線荷重 Ft がかかった歯面の歯元にかかる曲げ応力 σ [MPa, N/mm2] は、
{ \displaystyle
\sigma = \frac{F_t}{bty} =  \frac{F_t}{bm(\pi y)} = \frac{F_t}{bmY}
}
となる。
ここで、y を Lewis の歯形係数と呼ばれるが現在はモジュールによって歯車諸元を述べることが一般的なため、Y (= πy) を歯形係数と呼ぶこともある*1

これで曲げ応力を求めることは歯形係数を求める問題に帰着される。
危険断面幅 sF 及び危険断面から歯面対称線における荷重点までの高さ hF(下図参照)を用いると歯形係数は、
{ \displaystyle
x_{F}=\frac{s_{F}^2}{4h_F},~y=\frac{2x_{F}}{3t}=\frac{Y}{\pi}, ~Y=\frac{2x_{F}}{3m}=\frac{(s_{F}/m)^2}{6(h_F/m)}
}
と表される。
また、『歯車の転移』(仙波)によれば 20° 転移平歯車において歯形係数は転位係数を x とすると
 { \displaystyle
Y = Y_0/K \\
Y_0 = 0.58-2.4/z-28/z^2+180/z^3+6.1x(z+7)/(z+6x)^2\\
K = 2-(8/z)\cdot [1-2x/(1+x^2)]
}
と近似できる。

危険断面推定法

危険断面推定法には

  • Lewis による放物線内接法
  • 30° 接線法
  • Buckingham による方法

等がある。具体的な算出方法はまた今度。


▲ Lewis による放物線内接法

▲ 30° 接線法

▲ Buckingham による方法

参考文献

上3冊は明倫館で入手した。
歯車の本は古いのが多い印象で、いい本は(絶版が怖いから)基本即買い。
最近のは表面をさらったのが多すぎて実用性にも専門性にも欠ける気がする。

『技術資料~』は実設計向きでまあまあ値は張るが歯車設計者なら持っていて損はない気がする。
仙波先生の『歯車』シリーズ、網羅的かつ詳しいのだが如何せん絶版かつ入手難易度が高い(例えば10巻とか)のが痛すぎる…。*2

*1:各所で歯形係数の定義や記法が違うので注意。今回定義した y または Y の逆数である 1/y や 1/Y を歯形係数とすることもある。例えば JGMA 401-01:1974 (危険断面推定は 30° 接線法による)の歯形係数 YF は YF = 1/Y である。

*2:2021/05/08追記:ちょっと前に全10巻、入手しました。