potass' blog

ポタシウムのことが書いてないブログ。

低温で接着、密着させるときに使うもの

低温実験に使う接着剤、グリス関連のまとめ。
写真は研究室にあったやつです。

※間違ってたり、加えたほうがいい情報がありましたらコメントまで。

グリス (Grease)

密閉性が高い(高真空が欲しい)ときのジョイント部分の潤滑剤に使用する。反磁性はあるがその寄与は小さい。

シリコングリス (Silicon Grease)

非常に汎用なグリス。色は透明。
主に O リングなどのジョイント部分に塗り、密閉度を上げることに使用。
磁性が小さいこともあり磁化測定において小さな試料の固定にも使用する。


アピエゾン (Apiezon)

シリコンが汎用ならこちらは専門。
シリコンより高価だが高真空を求めたいときはこっちを使う。
実験機器のガラスや金属製のプラグの潤滑にも使う。
使う温度領域によって L、M、N、H、T など分けられている。
ヘリウム温度程度からそれ以下での低温実験では主に M、N が用いられる。
温度計などとの熱接触や低温での試料の固定には N を用いることが多い。
室温領域などでは M が用いられることが多い。

アピエゾンシリーズ|アラム株式会社
http://www.web-aram.com/product_data/07_silicon/68.html

Apiezon | Apiezon High Vacuum Greases Properties Table
http://www.apiezon.com/products/vacuum-greases/vacuum-greases-properties-table

エポキシ系接着剤

スタイキャスト (Stycast)

ここのサイトが詳しい。このサイトからの製品仕様書へのリンクも要参照。

スタイキャスト|株式会社アクシス
http://www.axj.co.jp/kuraioparts%20sutaikyasuto.html

スタイキャスト1266 (Stycast 1266)

とりあえず「固めたい」という場合によく用いる。溶接のように2つのものをくっつけたりパテ*1みたいにも使う。
私はこいつを加工したことはないが 1266 は旋盤等で加工ができるらしい。
固化すると透明になる。
磁性への影響が小さく、これを加工した部品もよく用いられる。
A が主剤で B が硬化剤。混ぜるときの重量比は A:B = 100:28、体積比では A:B = 100:33。

スタイキャスト2850GT (Stycast 2850GT)

こちらも固めたい場合に使う。
1266 に比べて硬いがその分切削もしにくい。
加えて磁性に少し寄与する。
色は黒。
研究室では硬化剤は 9M を用いている。
混合の重量比は 100:3 である。

アラルダイト (Araldite)

「エポキシ系接着剤?」って思うかもしれないけど雑に言えばこれ。
低温系研究室でも実験用途で使うらしい。

ワニス (Vanish)

GE7031

色は黒っぽい茶色。
主に低温で電気的に絶縁したいが熱的には接触したい場合に用いられる。
溶剤はエタノールトルエンを体積比 1:1 に混ぜたもので非常によく溶ける。


参考にしたサイト

マニュアル|電子物性学講座<兵庫県立大学>
http://www.sci.u-hyogo.ac.jp/material/low_temp/manual.html

だいたい書きたいことここにあったわ。

"私の使っている接着剤"アンケートの結果報告|低温中級技術シリーズ 10
http://hdl.handle.net/11094/4289

この「低温中級技術シリーズ」面白いな。ネット社会になろうともこういう(一般の人から見て)マニアックなことはなかなか外には出てこないんだよねぇ。

Practical Cryogenics - An Introduction to Laboratory Cryogenics | N. H. Balshaw
http://research.physics.illinois.edu/bezryadin/links/practical%20Cryogenics.pdf
※pdf 直リン

教科書的なことだけじゃなくて「小さなことだけど痒いところ」も結構書いてある印象。
最後の「用語集」はかなり好き。

*1:エアコンの排気口につける粘土みたいなアレ。